フィアット、あのムルティプラの精神を受け継ぐ「マルチプレイ・コンセプト」を発表!ミニバン・SUV・ピックアップを1台に集約?

あのムルティプラの精神を受け継ぐコンセプトモデル「Multiplay(マルチプレイ)」を公開!

フィアットが、ちょっと欲張りすぎにも見えるコンセプトカーを発表しました。

2026年10月、パリモーターショーに先駆けて披露された「Multiplay(マルチプレイ)」は、ミニバンの広さ、SUVの存在感、ピックアップトラックの積載性を1台にまとめようというコンセプトモデルです。

全長は4.45m。家族で出かけるときは最大6人+αが乗れるファミリーカーになり、荷物をたくさん積みたいときには荷台を備えた4人乗りピックアップへと変形します。

実はこのクルマ、フィアットの歴史的なモデル「600 ムルティプラ」や、1998年に登場した「ムルティプラ」の思想を受け継ぐ存在でもあります。

昔からフィアットは、限られたボディサイズの中にできるだけ広い室内空間を確保することに挑戦してきました。今回のマルチプレイでは、その考え方がさらに進化し、なんと車体後部そのものを動かして用途を切り替えるという大胆な仕組みを採用しています。

クルマを何台も所有しなくても、1台で家族旅行からアウトドア、ペットとのお出かけまで対応しようという発想です。

リア部分が動いてピックアップに変形!

フィアット、あのムルティプラの精神を受け継ぐ「マルチプレイ・コンセプト」を発表!ミニバン・SUV・ピックアップを1台に集約?

マルチプレイ最大の特徴は、車体後部をスライドさせる独自構造「C-Pillar Metamorfosi」です。

後部のモジュールを専用ガイドに沿って前後に動かすことで、ファミリーカーとしての密閉された荷室を、外からアクセスできるオープンな荷台へと変化させます。

マルチプレイ・コンセプト 内装 後部

マルチプレイ・コンセプト 内装 スライド状態

ファミリーモードでは6人乗りに追加の多目的シートを組み合わせた「6+1」の構成。ピックアップモードでは4人乗りとなり、後部に自転車やキャンプ用品、スポーツ用品などを積める荷台が現れます。

リアスポイラーも回転させることで自転車ラックとして利用でき、ピックアップモードでは最大2台の自転車を搭載できる設計です。

つまり、普段は家族を乗せて走り、休日に大きな荷物を運びたくなったらクルマの後ろを変形させる、という使い方が想定されています。

最近のクルマは、SUVとクーペを組み合わせたり、オフロード車に高級セダンのような内装を与えたりと、カテゴリーの境界線が曖昧になっています。しかしMultiplayは、見た目を少し変えるだけではなく、用途に合わせて車体の構成まで変えようという発想です。

ただ、ここまでくると「今日はSUVで出かけよう」「荷物が多いからピックアップを借りよう」と悩む必要がなくなる一方、出発前に変形操作をする時間も必要になりそうで、最終的にはいずれかのスタイルで固定されそうな気もしますね。

フィアット、あのムルティプラの精神を受け継ぐ「マルチプレイ・コンセプト」を発表!ミニバン・SUV・ピックアップを1台に集約?

現時点ではコンセプトカーなので、実際の操作方法や変形にかかる時間、耐久性などは今後の課題。便利な仕組みであることは間違いなさそうですが、量産車にするには解決すべきことも多そうです。

あのムルティプラとの関係は?

フィアットの「Multipla(ムルティプラ)」

今回のマルチプレイを語るうえで外せないのが、フィアットの「Multipla(ムルティプラ)」です。

フィアットは1956年、コンパクトな「600」をベースにした「600 ムルティプラ」を発売しました。全長約3.5mという小さなボディに6人が乗れる空間を確保しており、当時としては非常に独創的なパッケージングを採用したモデルです。

その後、1998年には新世代のムルティプラが登場。こちらも全長4m未満というコンパクトなボディに6つの独立シートを2列で配置し、広い室内空間を実現していました。

フィアットの「Multipla(ムルティプラ)」

そして、1998年型ムルティプラといえば、やはり独特のフロントデザインを思い出す人も多いのではないでしょうか。

フィアットの「Multipla(ムルティプラ)」

フロントガラスの下に独立したヘッドライトが配置されたような、上下に分かれた個性的な顔つきは、当時からかなり強い存在感を放っていました。実用性を重視した結果、デザインまで常識の枠から飛び出してしまったような一台です。

もちろん、今回のマルチプレイが1998年型の外観をそのまま再現しているわけではありません。両者に共通しているのは、見た目よりも空間の使い方や実用性を重視し、従来のクルマの常識にとらわれないことです。

フィアットの「Multipla(ムルティプラ)」

1956年の600 ムルティプラが小さなボディに6人を乗せ、1998年型ムルティプラが独特のシート配置で室内空間を確保したのに対し、今回のマルチプレイは車体後部を動かすことで、乗員を乗せる空間と荷物を積む空間を切り替えようとしています。

言ってみれば、ムルティプラが「小さなクルマにどうやって人を乗せるか」を考えたモデルだったとすれば、マルチプレイは「1台のクルマにどこまで違う役割を持たせられるか」を考えたモデルです。

1998年型ムルティプラは、その個性的なデザインばかりが話題になりがちですが、実は室内空間の使い方にも大きな工夫がありました。今回のマルチプレイを見ると、フィアットが長年にわたって「限られたサイズで最大限の使い勝手を実現する」というテーマに取り組んできたことが分かります。

ペット専用シートに、くつろぎ用のラウンジシートまで

マルチプレイ・コンセプト 内装

室内にも、フィアットらしい遊び心が詰め込まれています。

まず目を引くのが「Petsenger seat(ペットセンジャーシート)」と呼ばれる多目的ユニットです。

このシートは、チャイルドシートの取り付け場所やペット用スペースとして使えるほか、小さなテーブルや収納スペースとしても活用できる設計になっています。

ペットとの移動を想定した工夫もあり、シートクッションの一部は取り外してリードとして利用できる構造。ドアには折りたたみ式の水飲みボウルを収納するスペースも用意されています。ペット用の装備を後から買い足すのではなく、クルマの構造そのものに組み込んでいる点は興味深いですね。

さらに、助手席は駐車中に「Sunseat(サンシート)」というラウンジ風のスタイルへ変更できます。シートを後ろ向きにしてダッシュボードを背もたれのように使い、パノラマルーフの下でくつろげる空間を作るというものです。

マルチプレイ・コンセプト 内装

家族を乗せるだけでなく、休憩したり、本を読んだり、景色を眺めたりする場所としても使えるわけです。

クルマの中で休憩するだけなら普通のシートでも十分ですが、フィアットはそこに「ラウンジ」という名前まで付けてきました。ここまでくると、目的地へ向かうための乗り物なのか、目的地に着いてからも過ごすための部屋なのか、少し分からなくなってきます。

ボディとインテリアのカラーはスイカがモチーフ!

マルチプレイ・コンセプト 内装 スイカ
外装だけだと緑色の車かなと思いますが、内装は完全にスイカですね。

マルチプレイのデザインでもうひとつ面白いのが、カラーリングのテーマです。

ボディはスイカの皮を思わせる鮮やかなグリーン。インテリアにはスイカの果肉をイメージしたレッドやピンクを採用し、さらにターコイズ系の色を組み合わせています。

イタリアの夏や、人々が集まって過ごす楽しさを表現したデザインとのことで、外装だけを見ると爽やかなグリーンのコンセプトカーですが、ドアを開けるとピンクやレッドが広がるという、なかなか大胆な組み合わせです。

高級車では落ち着いたブラックやブラウン、スポーツカーでは鮮烈なレッドなどが定番ですが、こちらはまさかのスイカ。とはいえ、家族やペットと過ごす楽しい時間をイメージしたクルマなので、堅苦しく考えず、これくらい明るい方向へ振るのもフィアットらしいところでしょう。

マルチプレイ・コンセプト 内装 スイカ

内装には、縫製を必要としない3Dニット製法を活用した単一素材のテキスタイルも採用。素材の無駄を減らしながら、柔らかく使いやすい表面を実現することを目指しています。子どもやペットが使うエリアには、防水性を考慮した仕上げも取り入れられています。

見た目は遊び心たっぷりですが、日常での使いやすさも意識されているようです。

フィアットは「1台で何でもできるクルマ」を実現できるのか?

フィアット、あのムルティプラの精神を受け継ぐ「マルチプレイ・コンセプト」を発表!ミニバン・SUV・ピックアップを1台に集約?

マルチプレイは、単なる変わり種のコンセプトカーではなく、1956年の600 ムルティプラや1998年型ムルティプラから受け継がれてきた、「限られたサイズで室内空間を最大限に活用する」という考え方を、車体構造そのものを変える仕組みへと発展させた提案です。

家族の送迎、ペットとの移動、キャンプや自転車といったアウトドア活動まで、生活の中で変化するニーズに1台で対応しようとしています。

ただし、ミニバンとしての快適性、SUVらしいスタイル、ピックアップの積載性をすべて高い水準で実現するのは簡単ではありません。可動構造が増えれば、コストや耐久性、安全性とのバランスも重要になります。

もっとも、現段階ではあくまでコンセプト。ピックアップにもミニバンにもなるクルマを、フィアットが本当に販売するのかは分かりません。

1998年型ムルティプラが登場したときも、その独特なデザインは大きな話題になりました。今回のマルチプレイも、もし市販化されれば、今度は「見た目が個性的」というだけでなく「本当に変形するの?」という話題を呼ぶことになりそうです。

ただ、ここまで現代的にいかにもなコンセプトカーのデザインで仕上げてきているにも関わらず、当時のムルティプラのあの独特な市販デザインよりもコンセプトデザインの方が大人しく見えてしまうのもある意味すごいですね。

参考資料

FIAT / Stellantis Media
「FIAT MULTIPLAY MAKES HIS DEBUTS IN PARIS: 3-in-1 VEHICLE」
https://www.media.stellantis.com/em-en/fiat/press/fiat-multiplay-makes-his-debuts-in-paris-3-in-1-vehicle

FIAT / Stellantis Media
「FIAT presents Multiplay: challenging conventions to transform mobility, the FIAT way」
https://www.media.stellantis.com/uk-en/fiat/press/fiat-presents-multiplay-challenging-conventions-to-transform-mobility-the-fiat-way

FIAT / Stellantis Media
「MULTIPLA: IN BRIEF」
https://www.media.stellantis.com/em-en/fiat/press/multipla-in-brief