ポルシェ「フラハバウRS」発表!
ポルシェから、ひと目見ただけでは通常の911とは思えないほど大胆なワンオフモデルが登場しました。
その名も「Flachbau RS(フラハバウRS)」。
ポルシェ愛好家の顧客の依頼により、ほぼ新車状態の911 GT2 RSをベースに、ポルシェの特別注文プログラム「Sonderwunsch(ゾンダーヴンシュ)」によって製作された世界に1台だけのモデルです。
最大の特徴は、通常の911とは大きく異なる低く伸びたフロント部分。これは1970年代のレーシングカーから着想を得たもので、単なるドレスアップではなく、ポルシェのモータースポーツ史と現代の911 GT2 RSを組み合わせた特別な1台となっています。
911 GT2 RSを「フラハバウ」に
今回のモデルを見て最初に気になるのが、「なぜ911 GT2 RSがこんな姿になったのか」というところでしょう。
その答えが、ポルシェがかつて911に採用した「フラハバウ」というデザインです。
フラハバウはドイツ語で「低い造り」を意味し、一般的には911のフロント部分を低くしたフラットノーズ、いわゆるスラントノーズを指します。
ポルシェでは1980年代に911ターボをベースとしたフラハバウ仕様が実際に生産されており、今回のモデルでは、その特徴的なスタイルを現代の911 GT2 RSに取り入れました。
ただ昔の911を再現したわけではなく、現代の空力技術やカーボンパーツなどを組み合わせているため、クラシックな雰囲気と最新の911らしさが同居しています。
伝説の「モビーディック」がデザインの原点
このフラハバウRSをさらに特別な存在にしているのが、ポルシェ935/78「モビーディック」との関係です。
1978年のル・マン24時間レースに投入された935/78は、極端に長く低いフロントと大きく張り出したボディを持っていました。その姿から「モビーディック」という愛称で呼ばれ、現在でもポルシェのレーシングカーを代表する1台として知られています。
今回のワンオフモデルでは、この935/78のデザインをそのまま復刻するのではなく、911 GT2 RSに合わせて現代的にアレンジ。
ボディにはGrand Prix Whiteを採用し、ブラックとカーボンファイバーを組み合わせることで、レーシングカーを思わせる雰囲気に仕上げています。
見た目だけではない、フラハバウRSの空力性能
フラハバウという名前からデザインを重視したモデルにも見えますが、実際には走行性能についてもかなり本格的に手が入っています。
フロントフェンダーにはエアアウトレットを設け、ホイールハウス内の空気を逃がすことで空力性能を改善。さらにフロントスプリッターやアンダーボディ、リアディフューザーにも変更が加えられています。
リアには911 GT3 R rennsportから着想を得た大型リアウイングを装着。最高速度340km/hの状態で「High Downforce」に設定すると、リアアクスルには554kgのダウンフォースが発生するとされています。
つまり、このフラハバウは、過去のレーシングカーを思わせるデザインを楽しむだけのクルマではなく、現代の技術によって実際の走りまで追求したモデルなのです。
31.6kgの軽量化も実施
さらにポルシェは、ワンオフモデルだからといって重量面で妥協していません。
ベースとなった911 GT2 RS ヴァイザッハ・パッケージ仕様から、オーディオシステムやPCM、遮音材などを取り除き、31.6kgの軽量化を実施しています。
インテリアも一般的な高級スポーツカーとは少し違い、快適性よりも走ることを優先したスパルタンな仕上がりです。
世界に1台しか存在しないクルマにもかかわらず、こうした部分まで手を入れているところを見ると、ポルシェがこのプロジェクトを単なるショーカーとして扱っていなかったことが分かります。
世界に1台のために約3年をかけて開発
このモデルが完成するまでには、なんと約3年の時間が費やされています。
Sonderwunschだけでなく、Style Porsche、ヴァイザッハの開発エンジニア、Porsche Motorsport、Mantheyなどが開発に参加し、デザインだけでなく安全性や空力性能についても検証されました。
さらに3台のテスト車両を用意して各種試験を行い、ニュルブルクリンク北コースでは50周にわたる実走テストも実施しています。
世界に1台しか作られないモデルなら、普通なら「そこまで必要なのか」と思ってしまいます。しかし、ポルシェは公道を走る1台のクルマとして成立させるために、通常の開発車両と同じように徹底して仕上げています。
過去のポルシェを現代の911に取り込んだ1台
フラハバウRSを見ていると、単純に「昔のポルシェを再現したクルマ」とは少し違うことに気付きます。
1980年代の911ターボ フラハバウ、1978年の935/78 モビーディック、そして991.2世代の911 GT2 RS。本来なら別々の時代に存在した3台ですが、今回のワンオフモデルでは、それぞれの要素を一つのクルマにまとめています。
特に面白いのは、過去のデザインをそのまま復活させるのではなく、現代の911 GT2 RSだからこそ成立するフラハバウに仕上げていることです。
懐かしさを感じさせながらも、LEDヘッドライトやカーボンパーツ、大型リアウイングを見ると、やはり現代のポルシェ。その絶妙なバランスが、この世界に1台のフラハバウRSの魅力なのではないでしょうか。
参考資料
Porsche Newsroom「In the footsteps of Moby Dick: an extraordinary one-off slantnose model」
0 コメント