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スーパーカーに使われるカーボンブレーキの驚きの性能と秘密
フェラーリやランボルギーニ、ポルシェなどのスーパーカーを見ていると、大きなブレーキディスクと派手なカラーのブレーキキャリパーが目に入ります。
なかでも高性能モデルで採用されているのが「カーボン・セラミックブレーキ」です。
名前からすると「軽いから使っている」というイメージがありますが、実際にはそれだけではありません。
高温になっても安定した制動力を発揮できること、バネ下重量を減らせること、ブレーキの耐フェード性に優れていることなど、スーパーカーの性能を引き出すために重要なメリットがいくつもあります。
では、なぜ普通の鉄製ブレーキではなく、わざわざ高価なカーボン・セラミックブレーキを使うのでしょうか?
そもそも「カーボンブレーキ」とは?
まず整理しておきたいのが、「カーボンブレーキ」という言葉です。
F1などのレーシングカーで使われるカーボンディスクと、フェラーリやポルシェなどのロードカーで使われるカーボン・セラミックブレーキは、厳密には同じものではありません。
純粋なカーボンブレーキは非常に軽く、高温域で優れた摩擦特性を発揮しますが、一般的な道路走行では十分な温度まで上昇しないことがあります。
そこでロードカー向けに開発されたのが、カーボンファイバーで補強されたセラミック系の複合材料を使ったブレーキディスクです。Bremboによると、カーボン・セラミックディスクはカーボンが持つ軽量性や高温特性を生かしながら、ロードカーで問題となる低温時の性能や摩耗などを改善したものです。
ポルシェでは「PCCB(Porsche Ceramic Composite Brake)」という名称で採用されています。
なぜスーパーカーには大きなブレーキが必要なのか?
| レクサスLFAに装備されたカーボンセラミックブレーキ(Photo by Taha Hatipoğlu via Unsplash) |
そもそも、なぜスーパーカーにはあれほど大きなブレーキが必要なのでしょうか。
理由は単純で、速い車ほど止めるのも大変だからです。
例えば、一般的な乗用車とスーパーカーが同じ100km/hで走っていたとしても、車重やタイヤ、ブレーキ性能などによって必要な制動能力は変わります。
さらにスーパーカーは200km/h、300km/hといった速度域まで一気に加速できるため、その速度から何度も強いブレーキをかけることを想定しなければなりません。
ブレーキは運動エネルギーを熱エネルギーへ変換することで車を減速させます。
つまり、速度が上がるほどブレーキは大量の熱を受けることになります。
ここで重要になるのが、「熱に強いブレーキ」です。
最大のメリットは「高温でも性能が安定する」こと
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カーボン・セラミックブレーキの大きな特徴のひとつが、高温域での安定性です。
ブレーキを強く、そして何度も使い続けると、ディスクやパッドの温度はどんどん上昇します。
一般的な鋳鉄製ディスクでは、過酷な使用によって摩擦特性が変化し、ブレーキの効きが低下する「フェード」が発生することがあります。
一方、カーボン・セラミックディスクは高温下でも変形が少なく、繰り返し強いブレーキを使った場合でも制動力を安定させやすいのが特徴です。Bremboはカーボン・セラミックディスクについて、高温下での変形を抑え、繰り返し使用した後も安定したブレーキ力を維持すると説明しています。
サーキットを走るスーパーカーにとって、これは非常に大きなメリットです。
1回だけ強く止まれることよりも、何度ブレーキを踏んでも同じように止まれることのほうが重要だからです。
カーボン・セラミックは「半分ほど軽い」
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そして、もうひとつ大きなメリットがあります。
それが軽量化です。
ポルシェによると、PCCBのブレーキディスクは鋳鉄製ディスクと比較して約50%軽量化されており、車種によっては車両全体で約20kgの軽量化につながります。
「20kgくらいなら大したことない」と思うかもしれません。
しかし、ブレーキが装着されている場所が重要です。
ブレーキディスクやホイールなどは「バネ下重量」と呼ばれる部分に含まれます。
この重量を軽くすることで、サスペンションが路面の凹凸に対してより素早く動けるようになり、車の動きにも影響します。
ポルシェもPCCBによるバネ下重量の低減が、サスペンションの応答性やステアリングフィールの向上につながると説明しています。
つまりカーボン・セラミックブレーキは、単純に「車を軽くするための部品」ではありません。
車の動きそのものを軽快にするための部品でもあるわけです。
「バネ下重量」が軽くなるとなぜ車は変わる?
ここはスーパーカーを理解するうえで意外と面白いポイントです。
車のボディを10kg軽くするのと、ホイールやブレーキなどのバネ下重量を10kg軽くするのでは、車の動きに与える影響が同じとは限りません。
タイヤと一緒に上下に動く部分が軽くなれば、サスペンションは路面の変化に対してより素早く対応できます。
結果として、路面追従性の向上、ハンドリングの向上、乗り心地の改善などにつながります。
スーパーカーが「軽量化」に異常なほどこだわる理由は、単に最高速度を上げたいからではありません。
車がドライバーの操作にどれだけ素早く反応するか。
そこまで含めて性能を高めるためなのです。
カーボン・セラミックは「ブレーキの寿命」にもメリットがある
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意外に思われるかもしれませんが、カーボン・セラミックディスクは耐摩耗性にも優れています。
Bremboは、カーボン・セラミックディスクが鋳鉄製ディスクと比較して少なくとも4倍長寿命になると説明しています。
もちろん使用環境や運転方法によって寿命は変わりますが、一般的なブレーキよりも長寿命で、普通に街乗りをするような走り方の場合は頻繁に交換するようなものではないようです。
ただ、サーキット走行ではブレーキに非常に大きな負荷がかかるため、単純に「半永久的に使える」と考えるのは適切ではありません。
それでも、高い耐熱性と耐摩耗性を兼ね備えていることは、スーパーカーにとって大きなメリットです。
雨やサビにも強い
もうひとつの特徴が、鋳鉄製ディスクとは異なる耐腐食性です。
鋳鉄製ブレーキディスクは、雨や湿気などによって表面に錆が発生することがあります。
一方、セラミック系のディスクは腐食に強く、長期間にわたって性能や外観を維持しやすいというメリットがあります。
高価なスーパーカーでは、性能だけでなく見た目も重要です。
イベントなどでスーパースポーツカーが展示してあるのを見ると汚れが少なく綺麗な状態のブレーキを見ることがありますが、洗車して綺麗な状態を保っているというだけでなく、そもそも汚れにくいブレーキだということは意外と知られていないかもしれません。
全く汚れないわけではないですが、ブレーキダストも付きにくいらしく、ホイールの隙間から見える大径のブレーキディスクがきれいな状態を保ちやすいことも、オーナーにとっては嬉しいポイントでしょう。
それでもカーボン・セラミックブレーキが高価な理由
ここまでメリットを見ると、「それなら全部の車にカーボン・セラミックブレーキを付ければいいのでは?」と思うかもしれません。
しかし、そう簡単にはいきません。
最大の問題のひとつが価格です。
実際、スーパーカーを所有されている方に値段を聞いたら車のパーツというより、下手したらブレーキ交換だけで安い国産車が買えるんじゃないかと思うようなびっくりするような価格でした。。。
カーボン・セラミックブレーキは製造工程が複雑で、鋳鉄製ディスクよりも高価になります。
Bremboによると、カーボン・セラミックディスクは炭素繊維を含む材料を高温処理し、さらにシリコンを浸透させるなど、非常に複雑な工程を経て製造されています。最終的な加工には、非常に硬い材料に対応するダイヤモンド工具まで使用されます。
軽い、熱に強い、摩耗しにくいというメリットの裏側には、製造コストが高いという大きなデメリットがあります。そのため、一般的な乗用車にまで採用する必要性はありません。
もし装備したとしたら車両本体価格がとんでもないことになる気がします。
「高性能だから」というだけではない
ここまで見ると、スーパーカーがカーボン・セラミックブレーキを採用する理由が見えてきます。
もちろん最大の目的は、強力なブレーキ性能を得ることです。
しかし、それだけではありません。
高温でも安定した制動力を維持できる、ブレーキそのものを軽量化できる、バネ下重量を減らせる、サスペンションの動きを改善できる、耐摩耗性や耐腐食性にも優れている。
こうしたメリットが組み合わさることで、スーパーカーの走行性能全体を底上げしています。
つまりカーボン・セラミックブレーキは、「車を止めるためだけの部品」ではないのです。
実はスーパーカーだけの技術ではない
| 911ターボSに装備されたポルシェセラミックコンポジットブレーキ(PCCB) (画像:ポルシェのプレスイメージより) |
カーボン・セラミックブレーキは、フェラーリやランボルギーニのようなスーパーカーだけに使われているわけではありません。
ポルシェでは「PCCB」として911などの高性能モデルに採用されており、2000年に996型911ターボでオプションとして登場。その後、911 GT2では標準装備となりました。
つまり、カーボン・セラミックブレーキはレーシングカーから生まれた技術を、市販車で使えるように進化させたものとも言えます。
ただ、ポルシェの911が一般的な市販車のカテゴリかと言われると微妙ですが、最初は超高級車やスーパーカー、ハイパーカーに採用された技術が、次に高性能スポーツカーに採用され、年月とともにもう少し下のカテゴリの車にも採用され、最終的にはほとんどの車に装備される流れもあるので、未来には今よりも一般化している可能性もありそうですね。
実際、Bremboもカーボン・セラミック技術について、レーシング用カーボンブレーキのメリットをロードカーに持ち込むために開発された技術だと説明しています。
スーパーカーの速さを支えているのは「加速」だけではない
| Photo by Andrew Grove via Unsplash |
スーパーカーというと、1,000馬力を超えるエンジンや最高速度300km/h、400km/hといった数字に注目しがちです。
しかし、本当に高性能な車を作るためには「速く走る」だけでは不十分です。
速く加速し、速くコーナーを曲がり、そして確実に止まる。
そのすべてが揃って初めて、スーパーカーとしての性能が成立します。
カーボン・セラミックブレーキは、その中でも「止まる」という部分を支える重要な技術です。しかも、軽量化によってハンドリングにも影響を与える。そう考えると、ホイールの奥に見える大きなブレーキディスクは、単なる高級装備ではありません。
スーパーカーの性能を引き出すために、素材から徹底的に考えられた重要なパーツなのです。
参考資料
・Brembo「カーボンセラミックブレーキディスク」
Brembo公式サイト
・Porsche「Porsche Ceramic Composite Brakes (PCCB) explained」
Porsche公式サイト
・Porsche Newsroom「The innovations of the 911」
Porsche Newsroom
※本記事は、各メーカー・ブレーキメーカーが公開している技術資料をもとに作成しています。ブレーキの仕様や性能、装備の有無は車種・グレード・市場によって異なります。
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