ポルシェ「550 J」

ポルシェ「550 J」登場!伝説の550スパイダーを約80%サイズで再解釈。

ポルシェが、1950年代を代表するレーシングカー「550スパイダー」を現代に再解釈した新たなモデルを発表しました。

今回登場したのは、英国のヘドリー・スタジオ(Hedley Studios)とポルシェが共同で手掛けた「550 J」で、オリジナルの550スパイダーを約80%のサイズで再現したコンパクトな2シーター・オープンモデルとなっています。

550スパイダーといえば、ポルシェのモータースポーツ史を語るうえで欠かせない存在ですが、今回の550 Jは当時のエンジンを再現するのではなく、48Vの電動パワートレインを搭載しているのが大きな特徴です。

世界250台限定で生産され、英国のヘドリー・スタジオで1台ずつハンドメイドされるということで、現代のポルシェとしてはかなり特殊なモデルになっています。

「550 J」は550スパイダーを現代に再解釈

ポルシェ「550 J」

今回の550 Jは、1950年代の550スパイダーをそのまま復刻したモデルではありません。

ポルシェから正式なライセンスを受けたヘドリー・スタジオが、ポルシェの企業アーカイブへのアクセスや開発時のサポートを受けながら製作した、550スパイダーの現代版ともいえるモデルです。

車名の「J」は「Junior」を意味しており、全長は約2.9m、全幅は約1.2mと、オリジナルの550スパイダーのおよそ80%というコンパクトなサイズに仕上げられています。

2人乗りのオープンボディとなっているほか、550スパイダーを思わせる低いボディやシンプルなデザインも受け継がれており、写真を見ると小さなボディの中に往年のレーシングカーらしさが凝縮されていることが分かります。

ただ小さくしただけではなく、スチール製スペースフレームのシャシーにカーボンファイバー製ボディを組み合わせるなど、構造には現代的な技術が取り入れられています。

ポルシェのモータースポーツ史を作った「550スパイダー」

ポルシェ「550 J」

550 Jについて知るなら、まずベースとなった550スパイダーがどのようなクルマだったのかを見ておきたいところです。

550スパイダーは1954年に登場したポルシェ初のモータースポーツ専用設計モデルで、軽量なボディとミッドシップレイアウトを武器に、当時のレースで大排気量エンジンを搭載したライバルたちと戦いました。

その活躍を象徴するのが、1954年の「カレラ・パナメリカーナ」です。

ポルシェのワークスドライバーだったハンス・ヘルマンとヤロスラフ・ユハンが2台の550スパイダーで参戦し、全長3,077kmにも及ぶ過酷なレースを走り抜きました。

5日間にわたる戦いでは2台が総合3位と4位に入り、クラス優勝も獲得しています。さらにヘルマンはユハンをわずか36秒差で上回っており、小さな550スパイダーがより大きなエンジンを持つライバルたちを相手に健闘したことが分かります。

このときの活躍を記念して、後にポルシェのスポーツモデルで使われるようになったのが「Carrera(カレラ)」という名称です。現在の911 Carreraなどにもつながっていることを考えると、550スパイダーがポルシェに残したものはかなり大きいですね。

550スパイダーを約80%サイズに

ポルシェ「550 J」

そんな歴史的な550スパイダーを、現代の技術で約80%サイズにしたのが550 Jです。

全長約2.9m、全幅約1.2mというサイズは、現在のポルシェのスポーツカーと比べるとかなりコンパクトで、2人乗りのオープンボディということもあり、現代の道路を走っていたらかなり目立ちそうな大きさです。

もちろん550スパイダーを小さくしただけではなく、カーボンファイバー製ボディやスチール製スペースフレームなどを採用することで、クラシックカーの雰囲気と現代的な製造技術を組み合わせています。

ヘドリー・スタジオとポルシェが掲げているのも、伝統的なクラフトマンシップと現代のテクノロジーを組み合わせるという考え方で、550 Jはまさにそのコンセプトを形にしたモデルといえそうです。

エンジンではなく48Vの電動パワートレイン

ポルシェ「550 J」

550 Jとオリジナルの550スパイダーを比べたとき、最も大きく違うのがパワートレインです。

550スパイダーがレーシングカーとしてガソリンエンジンを搭載していたのに対し、550 Jには48Vの完全電動パワートレインが採用されています。

標準仕様の出力は約8kWで、「RS Package」を選択すると最大16kWまで引き上げられ、最高速度は約80km/hとされています。

最近のポルシェといえば、911やタイカンなど高性能なモデルが中心なので、8kWや16kWという数字を見ると少し意外に感じるかもしれません。

ただし、550 Jはそもそも最高速度や加速性能を競うためのモデルではなく、コレクターやデザイン愛好家をターゲットにした特別なモデルです。

そのため、550スパイダーのデザインや雰囲気を残しながら、パワートレインを電動化して現代的なモデルに仕上げたことのほうが、このクルマでは重要なのでしょう。

公道を走るためのポルシェではない

ポルシェ「550 J」

550 Jには、もうひとつ大きな特徴があります。それは、公道走行ができないことです。

最高速度は約80km/hに設定されていますが、一般的な市販車のようにナンバーを取得して街中を走るためのモデルではなく、ポルシェ自身もコレクターやデザイン愛好家に向けたコレクターズアイテムと説明しています。

最近のポルシェといえば300km/hを超えるモデルも珍しくないだけに、最高速度80km/hという数字には少し驚かされますが、あえてそこは狙っていない、意識していない立ち位置のモデルで、「ポルシェの新型スポーツカー」というより、歴史的な550スパイダーを現代の技術で楽しむための特別なプロダクトに近い存在です。

実用性を考えるとかなり特殊ですが、そもそも250台しか作られないうえ、1台ずつ英国でハンドメイドされるモデルなので、一般的なクルマとは違った価値を持たせているのでしょう。

世界250台限定でハンドメイド

ポルシェ「550 J」

550 Jの生産台数は世界250台限定です。

しかも工場で大量生産されるわけではなく、英国ビスターにあるヘドリー・スタジオで1台ずつ丁寧に製作されます。

開発にあたってはポルシェが企業アーカイブへの広範なアクセスを提供し、プロジェクト全体をサポートしているため、単なる550スパイダーのレプリカとは違った位置付けです。

ポルシェから正式なライセンスを受けたモデルであることもポイントで、1950年代の550スパイダーを参考にした別メーカーのレプリカではなく、ポルシェの歴史そのものを現代に持ち込むプロジェクトとして開発されています。

世界250台という生産台数もかなり限定的なので、オーナーにとってはクルマを所有するというより、ポルシェのモータースポーツ史の一部を手元に置くような感覚に近いかもしれません。

ボディカラーはかなり自由に選べる

ポルシェ「550 J」

550 Jは、ボディカラーについてもかなり自由度があります。

定番のポルシェ・シルバーをはじめ、ブルー、ホワイト、イエロー、レッドなど、歴代ポルシェを思わせるカラーを選択できるほか、モータースポーツをイメージしたリバリーにも対応しています。

さらに「Bespoke」プログラムを利用すれば、顧客の好みに合わせてほぼ自由に仕様を決めることができるとのことで、250台それぞれが異なる雰囲気に仕上がる可能性もあります。

550スパイダー自体がモータースポーツのために生まれたモデルなので、レーシングカーを思わせるカラーやリバリーを選ぶのもかなり似合いそうです。

現代のポルシェでは、メーカー純正のカスタマイズプログラムによって自分好みの1台を作ることが当たり前になっていますが、550 Jではその自由度をさらに突き詰めたような印象があります。

ポルシェ・モータースポーツ75周年に登場

今回550 Jが発表されたのは、ポルシェ・モータースポーツ75周年という節目のタイミングです。

550スパイダーはポルシェにとって初めてモータースポーツ専用に開発されたモデルであり、その後のポルシェのレーシングカーやスポーツカーにつながる重要な存在でした。

その550スパイダーを現代に再解釈するのであれば、75周年というタイミングはかなり相性が良いでしょう。

しかも、最新のエンジンを載せて性能を追求するのではなく、あえて48Vの電動パワートレインを採用したことで、単純な復刻モデルとは違う方向へ進んでいます。

550スパイダーの軽量でドライバー中心のキャラクターを意識しながら、現代の技術とクラフトマンシップを組み合わせて新しいモデルへ仕上げたところが、550 Jの面白いところです。

並べたら本物よりこっちに目がいきそうな「小さなポルシェ」

ポルシェ「550 J」

550 Jをガレージに置いて、隣に911を並べたら、どちらに目が行くのかも気になるところです。

もちろん実用性なら圧倒的に911ですが、550 Jには「これ、何のクルマ?」と聞きたくなるような独特の存在感があります。約80%サイズということもあって、実車を見たら写真以上に小さく感じるかもしれませんね。

それでも、ボディにはカーボンファイバーを使い、ポルシェ公認のもとで250台だけをハンドメイド。公道を走れないクルマにそこまでやるのか、と思ってしまいますが、こういうところにポルシェとヘドリー・スタジオのこだわりが出ています。

こういうクルマは、スペック表を眺めているより、実車をガレージに置いたときの姿を想像しているほうが楽しいのかもしれません。

参考資料