「フェラーリ 296 GT Modificata」登場!公道走行を前提としていないサーキット専用車に。
フェラーリは、公道ではなくサーキットでの走行を楽しむことに特化した新型のスペシャルモデル「296 GT Modificata(モディフィカータ)」を発表しました。
名前からすると「296 GTBをさらに高性能にしたモデル」のようにも見えますが、実際にはもっと過激なクルマです。
296 GT Modificataは公道走行を前提としていないサーキット専用車で、フェラーリの「Club Competizioni GT」プログラムで使用されるモデルとなっており、「296 GT3 Evo」をベースにレーシングカーの技術を取り入れながら、競技規則に縛られないことで、エンジンや空力、ブレーキなどをさらに自由に開発されています。
その結果、搭載されるV6エンジンはなんと730cv(約730PS)。
GT3レーシングカーよりも高い出力を持つ、かなり特殊なフェラーリです!
「296 GT Modificata」とは?
296 GT Modificataは、フェラーリがサーキット走行を楽しむ顧客のために開発したスペシャルモデルです。
最大のポイントは、一般的なレーシングカーとは違って、FIAなどの競技規則に合わせる必要がないこと。
通常のレース車両は、性能を均衡させるためのBoP(Balance of Performance)や車両規則などによって、エンジン出力や車重、空力性能などにさまざまなレギュレーションの制約があります。
一方、296 GT Modificataは競技に参加するための車両ではありません。
モディフィカータ(Modificata)とは、イタリア語で「改良された」「変更された」(英語のモディファイやモディフィケーション)を意味し、あくまでサーキットを走ることを目的としているため、296 GT3 Evoから受け継いだ技術をさらに発展させ、フェラーリが考える「もっと速く走るための296」を作り、そんな車でサーキットを走りたいという顧客向けのモデルです。
この考え方は、2020年に登場した「488 GT Modificata」の後継ともいえるものです。
つまり、296 GT Modificataは単なる「296 GT3の市販版」でも「296 GTBのレーシング仕様」でもなく、レースカーの技術を使いながら、レースのルールから解放されたサーキット専用モデルというわけです。
2,992cc V6ツインターボは730cvを発揮
搭載されるのは、リア・ミッドに搭載された2,992ccの120度V6ツインターボエンジン。
最高出力は730cv(約730PS)/7,500rpmに達します。
このエンジンは296 GT3 Evoのユニットをベースとしていますが、そのまま搭載しているわけではありません。
クランク機構やカムシャフト、吸気システム、インタークーラー、ターボチャージャーなどに大幅な変更が加えられています。
特にターボチャージャーは296 GT3 Evoと外側のハウジング形状を共有しながら、内部コンポーネントは296 GT Modificata専用に設計されています。
さらに「499P Modificata」で得られた経験も取り入れられているとのことです。
燃料システムも高出力化に合わせて変更され、低圧燃料ポンプを追加。
排気システムも専用設計となっています。
ちなみに296 GT3 Evoのエンジンは、レース規則による出力制限を受けています。
そのため296 GT Modificataの730cvという数字は、GT3レーシングカーより約130cvも高いという、なかなか異例のスペックです。
6速シーケンシャルミッションを採用
トランスミッションには、カーボンクラッチを組み合わせた6速シーケンシャルギアボックスを採用しています。
296 GT3 Evoをベースにしながら、ギア比も296 GT Modificata専用に変更されています。
サーキットではコーナーごとに適切なギアを選択する必要があるため、ロードカーのような快適性よりも、シフト操作の速さやダイレクトなレスポンスを優先した仕様です。
730cvのV6ツインターボと組み合わせることで、エンジンの性能を余すことなく引き出せるよう設計されています。
フロントからリアまで空力を徹底的に改良
296 GT Modificataでは、エンジンだけでなく空力性能にも大幅な変更が加えられています。
フロントには専用のボンネットを採用。
中央の開口部を大型化するとともに、ラジエーターから排出される熱気を左右のインタークーラーから離すための専用ベーンを設けています。
フロントウインドウ下部の開口部も再設計され、冷却性能を高めています。
さらにフロントには「Slotted Splitter」と呼ばれる新しいフロントウイングを装備。
車体下面へ流れる空気を最適化することで、ダウンフォースの向上を狙っています。
リアウイングは499Pの技術を取り入れる
リア側も大きく変更されています。
新設計のリアウイングには新しいセンターピラーを採用し、エンドプレートにはル・マン24時間レースなどで活躍した「499P」からインスピレーションを得たデザインを取り入れています。
さらに大型化された5mmのGurneyフラップも装備。
エンドプレートはリアウイングによって発生する渦をコントロールする役割も担っています。
フェラーリによれば、これらの改良によってフィオラノ・サーキットでは296 GT3 Evoより約3秒速いラップタイムを記録するとされています。
レース用のGT3マシンよりさらに速くするというあたりが、296 GT Modificataの異常なところです。
ブレーキもサーキット専用に強化
サーキットで速く走るためには、エンジンや空力だけでなく、止まる性能も重要です。
296 GT Modificataのブレーキシステムは、296 GT3 Evoおよび296 GT3 Bipostoの技術をベースに開発されています。
フロントには新設計のスチール製ブレーキディスクを採用し、冷却性能を強化。
さらにフロントバンパー下部には追加のエアインテークを設け、ブレーキへより多くの空気を送り込む構造としています。
ブレーキ冷却用ダクトも見直され、長時間のサーキット走行でも安定した制動性能を発揮できるよう改良されています。
ABSも専用にセッティングされており、プロドライバーだけでなく、さまざまな技量のドライバーがサーキットで性能を引き出せるよう配慮されています。
2シーターなのは意外?助手席も用意
ここまで本格的なサーキット専用車となると、1人乗りなのではと思ってしまいますが、296 GT Modificataは2シーターです。
ロールバーの設計を変更することで助手席を追加できる構造とされており、オーナーが同乗者とサーキット走行を楽しんだり、インストラクターから直接指導を受けたりすることができます。
標準装備にはカーボンクラッチ、プロフェッショナルシートハーネス、キャビン冷却システムなども含まれています。
さらにオプションでは、後方から高速で接近する車両を検知してドライバーへ知らせるリアレーダーシステムなども選択できます。
「Club Competizioni GT」のためのフェラーリ
296 GT Modificataは、単に購入してサーキットへ持ち込むだけのモデルではありません。
フェラーリの「Club Competizioni GT」プログラムへの参加を前提としたモデルとなっています。
Club Competizioni GTは、フェラーリの歴代GTレーシングカーなどを所有する顧客が、世界各地の有名サーキットで走行を楽しめるプログラムです。
296 GT Modificataを購入すると、2年間、または12ラウンドの参加権が含まれます。
つまりクルマだけを販売するのではなく、フェラーリが用意したサーキットイベントまで含めて楽しむためのパッケージになっています。
生産台数と価格は?
296 GT Modificataの生産台数について、フェラーリは「極めて少数」に限定するとしていますが、具体的な台数は公表していません。
価格についても現時点では明らかにされていません。
そもそも公道を走るための車両ではなく、Club Competizioni GTへの参加も含めた特殊なモデルなので、一般的な296シリーズのように「車両価格だけ」で考えるクルマではないでしょう。
過去も含め、このような車両は一般向けには価格などの情報が公開されず、おそらく具体的にこの車を購入してサーキットに持って行って走れるような楽しみ方ができるのが前提のVIPにしか伝えられることがないのではないかと思われ、フェラーリの限定サーキットモデルという性格を考えても、かなり高額になることは間違いなさそうです。
「296 GTB」とは別世界の296
| 通常の296 GTBともレーシングカーである296 GT3 Evoとも異なる立ち位置。 (画像は296GT3 Evoのプレスイメージより) |
フェラーリ「296 GTB」は、公道を走ることができるプラグインハイブリッド・スポーツカーです。
一方の296 GT Modificataは、同じ296という名前を持ちながら、目指している方向がまったく違います。
公道での快適性や実用性ではなく、サーキットで速く走ることを最優先。
さらに面白いのは、単純に296 GTBをレーシングカーにしたわけでもないことです。
296 GT3 Evoという本格的なレーシングカーから技術を取り込みながら、今度はそのGT3を縛っている競技規則からも解放する。
「レースに勝つためのクルマ」ではなく、「レースカーより速く走ることを楽しむためのクルマ」
というのが、296 GT Modificataの一番分かりやすい立ち位置なのかもしれません。
「296 GT Modificata」と「XX Programme」の違いは?
| 296 GT Modificataは「FXX K」のようなXX Programmeの車両ではありません。 (画像:FXX Kのプレスイメージより) |
ここで気になるのが、296 GT Modificataとフェラーリの「XX Programme」は何が違うのかという点です。
どちらも公道を走るためのクルマではなく、サーキット専用として開発されています。そのため一見すると、296 GT Modificataも「XXシリーズの新型」に見えてしまいます。
しかし、フェラーリの位置付けは少し異なります。
XX Programmeは、フェラーリが2005年にスタートさせた独自のテストドライバープログラム。
「FXX」を皮切りに、「599XX」「599XX Evo」「FXX K」「FXX K Evo」などを展開し、ロードカーをベースにしながら、通常の市販車では使えないような技術をサーキットで試す、いわばフェラーリの技術開発プログラムとして発展してきました。
一方の296 GT Modificataは、XX Programmeの車両ではありません。
296 GT3 Evoなどのレーシングカーから技術を取り入れながら、競技規則に縛られないサーキット専用車として開発され、フェラーリの「Club Competizioni GT」で顧客が走行を楽しむことを目的としています。
つまり、かなり簡単に分けると、
| 296 GT Modificata | XX Programme | |
|---|---|---|
| 位置付け | サーキット専用モデル | 技術開発・顧客テストプログラム |
| 主な目的 | 顧客がサーキット走行を楽しむ | フェラーリの技術を極限まで試す |
| 代表車種 | 296 GT Modificata | FXX、599XX、FXX Kなど |
| ベース | 296 GT3 Evoなどのレーシング技術 | 主にフェラーリのロードカー |
| レース参戦 | 競技用ではない | 競技用ではない |
| 専用プログラム | Club Competizioni GT | XX Programme |
という違いがあります。
ただし、両者に共通する部分もあります。
どちらも「レースに勝つためのレーシングカー」ではなく、フェラーリの技術を使ってサーキットを走ることそのものを楽しむためのクルマという点です。
実際、フェラーリのXX ProgrammeもFXX、599XX、FXX Kなどを「競技には参加しないサーキット専用車」として展開してきました。
その意味では、296 GT ModificataはXX Programmeの後継というより、「XX Programmeとは別のルートから生まれた、現代のサーキット専用フェラーリ」と考えると分かりやすいでしょう。
そして面白いのが、296 GT Modificataは296 GT3 Evoのレーシング技術を取り入れながら、レースそのものには出場しないということ。
「レースで勝つため」ではなく、「レースカーの技術を使って、顧客自身がサーキットを楽しむため」
というのが、XX Programmeとの最大の違いです。
フェラーリが作る「ルールに縛られない296」
「Modificata」という名前の通り、296 GT Modificataは既存の296を単純に強化したモデルではありません。
730cvのV6ツインターボ、専用のシーケンシャルミッション、徹底的に改良された空力、強化されたブレーキ。
そして何より、296 GT3 Evoよりフィオラノで約3秒速いという性能。
公道では使えず、レースにも出場するためのクルマではないという、一般的な自動車の価値観からすると少し不思議な存在です。
しかし、だからこそフェラーリらしいともいえます。
速さを競うためのレーシングカーではなく、レーシングカーの技術を使って「走ることそのもの」を楽しむ。
296 GT Modificataは、488 GT Modificataから続くフェラーリの特殊なサーキットモデルを、さらに一段上へ進化させた存在といえそうです。
参考資料/画像:
Ferrari「296 GT Modificata」公式プレスリリース
Ferrari「296 GT Modificata」公式ページ
フェラーリの特別なモデルをさらに詳しく
フェラーリには、今回の「296 GT Modificata」のようなサーキット専用モデルだけでなく、特定のオーナーのために世界に1台だけ製作される「ワンオフモデル」や、歴代の高性能モデルに受け継がれてきた「スペチアーレ」、さらにオープンモデルを意味する「アペルタ」など、さまざまな特別なモデルが存在します。
フェラーリの「特別な1台」がどのように生まれ、通常のモデルと何が違うのかを知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
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