なぜスーパーカーはエンジンを車体の中央に置くのか?速さを生み出す「ミッドシップ」の秘密!

なぜスーパーカーはエンジンを車体の中央に置くのか?速さを生み出す「ミッドシップ」の秘密!
Photo by Unsplash/Martí Sierra

スーパーカーに多い「ミッドシップ」の見た目だけじゃない明確な理由。

フェラーリやマクラーレン、ランボルギーニなどのスーパーカーを見ると、エンジンが車体の後ろ側に搭載されているモデルが多いことに気付きます。

一般的な乗用車ではエンジンを車体の前方に置く「フロントエンジン」が主流なのに、なぜスーパーカーはわざわざエンジンを中央に置くのでしょうか?

その大きな理由が、車体の中央に重量を集めることで、優れた運動性能を引き出せるからです。

スーパーカーの「ミッドシップ」とは?

スーパーカーの「ミッドシップエンジン」とは?
Unsplash/Tiago Ferreira

まず、スーパーカーでよく使われる「ミッドシップ」という言葉から説明しましょう。

ミッドシップとは、エンジンを前輪と後輪の間、つまり車体の中央付近に搭載するレイアウトのことです。

スーパーカーの場合、一般的にはキャビンの後ろ、後輪の前にエンジンを配置する「リア・ミッドシップ」が多く採用されています。

フェラーリも、V8を搭載するF8 Tributoについて、ミッドリアにエンジンを搭載することで最適な重量バランスを実現していると説明しています。

重いエンジンを中央に置くと何が変わる?

最大のメリットは、車体の重量を中央に集められることです。

エンジンは自動車の中でも特に重い部品の一つ。その重量を車体の端に近い場所へ置くのではなく、前後の車軸に近い中央へ移すことで、車の動きが軽快になります。

イメージとしては、棒の両端に重い荷物を取り付けた場合と、中央に取り付けた場合の違いに近いものがあります。

重いものが車体の端にあると、方向を変えるときに大きな力が必要になります。

一方、重量を中央に集めれば、車体が向きを変えやすくなります。

この特性は、特にコーナーで大きなメリットになります。

ポルシェもミッドシップスポーツカーについて、重量を車体中央に集めることで、よりバランスの取れた重量配分と優れた運動性能を実現できると説明しています。

コーナーで「曲がりやすい」車になる

スーパーカーにとって重要なのが、直線の速さだけではなくコーナーをどれだけ速く、安定して走れるかです。

車がコーナーを曲がるときには、ブレーキングやステアリング操作によって車体の荷重が前後左右に移動します。

このとき重量が車体の中央付近に集まっていると、車体の動きが比較的素直になり、ドライバーがコントロールしやすくなります。

フェラーリも、ミッドエンジン車は重量配分に優れ、ハンドリングのバランスが良いという考え方を示しています。

つまり、ミッドシップは単に「エンジンを後ろに置いた」というだけではなく、車を曲げるための重要な設計思想なのです。

後輪に強い駆動力を伝えやすい

もう一つのメリットが、後輪へのトラクションです。

リア・ミッドシップではエンジンが駆動輪である後輪の近くに配置されるため、後輪側に十分な荷重を確保しやすくなります。

これは大パワーを発生するスーパーカーにとって重要です。

500馬力、600馬力、さらに1,000馬力を超えるような車では、アクセルを踏んだときにタイヤが路面へ確実に駆動力を伝えられることが求められます。

エンジンの重量を後輪付近に置くことは、こうした大出力を効率よく路面へ伝えるうえでも有利になります。

「エンジンが後ろ」なら何でもいいわけではない

ミッドシップとリアエンジンの違い
911はリアエンジン、718はミッドシップ Photo by Unsplash/redcharlie

ここで注意したいのが、ミッドシップとリアエンジンは別物だということです。

例えばポルシェ911は伝統的にリアエンジンを採用しています。

リアエンジンはエンジンが後車軸より後ろに配置されるのに対して、ミッドシップはエンジンが前後の車軸の間にあります。

同じ「エンジンが後ろ」に見えても、車両の運動特性は大きく異なります。

ちなみに、ポルシェは911シリーズでリアエンジンを採用し、718でミッドエンジンを採用しています。

ミッドシップとリアエンジンの違い
ポルシェ718シリーズはミッドエンジン採用 Unsplash/Rico Reynaldi

ポルシェは911のリアエンジン方式について、後輪への優れたトラクションなどを特徴として挙げる一方、718 Caymanや718 Boxsterではミッドエンジンによる中央寄りの重量配置と俊敏なハンドリングを特徴としています。

つまり、どこにエンジンを置くかは、その車のキャラクターを決める重要な要素なのです。

なぜ普通の車はミッドシップにしないのか?

なぜ普通の車はミッドシップにしないのか?
Photo by Unsplash/Nils Limp

ここまで聞くと、「それなら全部の車をミッドシップにすればいいのでは?」と思うかもしれません。

しかし、ミッドシップには大きなデメリットもあります。

エンジンをキャビンの後ろに配置すると、エンジンルームや冷却システムなどのスペースが必要になります。

そのため、一般的なフロントエンジン車と比べると、室内空間や荷室の確保が難しくなります。

日常的な使いやすさや製造コストを考えれば、エンジンを前に置いたほうが合理的なケースも多いわけです。

だからこそ、日常の実用性よりも走行性能を優先するスーパーカーにミッドシップが向いているとも言えます。

ミッドシップの車内はうるさくないのか?

ミッドシップの車内はうるさくないのか?
実は車内が結構静かなミッドシップスーパーカーも多い。Unsplash/Agamveer Singh

ミッドシップ車と聞くと、「エンジンがすぐ後ろにあるなら、車内はかなりうるさいのでは?」と思う人も多いかもしれません。実際、フロントエンジン車と比べると、エンジン音や排気音が車内に伝わりやすい傾向があります。

特にフェラーリやランボルギーニなどのスーパーカーでは、エンジンを高回転まで回したときの迫力あるサウンドも魅力のひとつ。背後からエンジンの鼓動が直接伝わってくるため、一般的な乗用車とはまったく違うドライビング体験になります。

一方で、「ミッドシップ=常に車内が爆音」というわけではありません。 現代のスーパーカーでは、防音材や遮音構造、エンジンルームとキャビンを隔てるパネルなどが使われ、快適性にも配慮されています。

そのため、外では大きな音が鳴り響いているようなスーパーカーでさえ、車内は意外なほど静かなことが多く、車種によっては頭のすぐ後ろにV10やV12エンジンが存在していることすら、そこまで気にならないくらいに快適に設計されていたりもします。

また、車種によっては走行モードに応じて排気音を変化させることも可能です。街中では比較的静かに走り、高速道路やワインディングではアクセルを踏み込んだ瞬間にエンジンサウンドが一気に響く、といった演出もできます。

ただ、過去のモデルだったり、あえてスパルタンな味付けを売りにしているモデルなどは、隣に座っている人の声すら聞き取れないレベルでうるさいものもあるので、そのあたりは設計思想によりけりですね。

つまり、ミッドシップの車内は「エンジンが近いからうるさい」のではなく、「エンジンの存在を強く感じられる」のが特徴。スーパーカーにとっては、それもミッドシップならではの魅力のひとつと言えるでしょう。

スーパーカーが「中央」にこだわる理由

スーパーカーが「中央」にこだわる理由
車を思い通りに動かし走ることに重点を置いた結果。Photo by Unsplash/Flavien

ミッドシップの魅力を一言で表すなら、「車体の中心に重量を集めて、車を思い通りに動かしやすくすること」です。

スーパーカーは、強力なエンジン、大型ブレーキ、高性能タイヤ、複雑な空力システムなど、さまざまな性能を高いレベルで成立させる必要があります。

その中でエンジンという大きな重量物を車体中央付近に置くことで、コーナリング時の俊敏性や安定性を高めることができます。

フェラーリはリア・ミッドエンジン方式について、コンパクトな寸法、低い重心、優れた重量配分をスポーツカーに適した特徴として挙げています。

スーパーカーのボディを眺めたとき、キャビンのすぐ後ろに大きなエンジンが搭載されているのは、単に見た目がカッコいいからではありません。

そこには、「速く走るために車体をどう動かすか」という明確な理由があるのです。

そして、フェラーリやランボルギーニ、マクラーレンなどが長年にわたってミッドシップを採用してきたことを考えると、このレイアウトがスーパーカーにとってどれほど重要なのかが分かります。


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参考資料

Ferrari「Technological Masterclass」
Ferrari「F8 Tributo」公式資料
Porsche Newsroom「Right in the Middle」
Porsche「Mid-Engine vs Rear-Engine Porsche Layouts」

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