オープンカーの「SPIDER」と「SPYDER」の違いとは?なぜフェラーリはSpiderでポルシェはSpyderなのか。

オープンカーの「SPIDER」と「SPYDER」の違い
オープンカーのスパイダーの綴り「Spider」と「Spyder」の違いを解説!UnsplashMaxim Scheglov

オープンカーの「SPIDER」と「SPYDER」の違いとは?

フェラーリの「488 Spider」や、ポルシェの「718 Spyder」など、オープンカーの名前には「Spider」や「Spyder」という言葉が使われることがあります。

どちらも見た目は似たような名前で読み方も「スパイダー」ですが、スペルが違うと「何か意味が違うの?」と気になるところです。

実は、SpiderとSpyderに自動車のボディタイプとして明確な違いはありません。

どちらも基本的には、屋根を開けて走る2人乗りのスポーツカーを表す言葉として使われています。

では、なぜフェラーリは「Spider」で、ポルシェは「Spyder」なのでしょうか。

その背景には、自動車が誕生するよりも前の「馬車」の歴史が関係しています。

SpiderとSpyderは、もともと同じ言葉

SpiderとSpyderは、もともと同じ言葉
ポルシェのヘッドレストに入れられたSpyderの刺繍 Photo by Unsplash/Maxim Scheglov

まず、「Spider」と「Spyder」は別々のボディタイプを意味する言葉ではありません。

どちらも語源をたどると、19世紀ごろの軽量な2人乗りオープン馬車に行き着きます。

ポルシェによると、「Spider」または「Spyder」という名称は、馬車製造の世界で使われていた言葉が自動車へ受け継がれたものです。

当時の軽量なオープン馬車は、2人乗りで車体が軽く、細い車輪やフレームを持っていました。

その姿がクモの脚を連想させたことから、「Spider」という呼び方につながったとされています。

つまり、もともとは「クモ」を意味する英語のSpiderそのものが、自動車のオープンカーの名称になったというより、馬車の形状を表す呼び方が自動車に引き継がれたと考えると分かりやすいでしょう。

「Spider」と「Spyder」に意味の違いはある?

「Spider」と「Spyder」に意味の違いはある?

では、本題です。

「Spider」と「Spyder」はスペルが違いますが、自動車用語としては基本的に同じ意味です。

ポルシェも公式記事で、現在では「spider」と「spyder」がオープントップの2シーターを指す言葉として使われていると説明しています。

つまり、

Spider=オープン2シーター

Spyder=オープン2シーター

というのが基本的な考え方です。

「Spyderのほうがスポーティ」「Spiderは普通のオープンカー」といった性能上の違いが決まっているわけではありません。

このあたりは、意外と知られていないところです。

なぜ「Spider」と「Spyder」の2種類が生まれた?

では、なぜ同じような意味の言葉が2種類存在するのでしょうか。

これには、自動車メーカーがそれぞれの歴史の中で異なる表記を採用してきたことが関係しています。

「Spider」は英語として一般的な綴りですが、自動車の世界では「Spyder」という表記も早くから使われてきました。

特にヨーロッパのスポーツカーメーカーでは、ブランドの伝統や過去のモデル名を受け継ぐ形で「Spyder」という綴りが定着しています。

そのため、現在ではどちらが正しい、どちらが間違いという話ではなく、メーカーごとの伝統的なネーミングとして使い分けられていると考えるのが自然です。

フェラーリは「Spider」を使う

フェラーリは「Spider」を使う
フェラーリ488のオープンバージョン「488 Spider」(画像:フェラーリ488スパイダーのプレスイメージより)

代表的なのがフェラーリです。

フェラーリでは「488 Spider」や「458 Spider」、「430 Spider」、最近では「849 Testarossa Spider」など、オープンモデルに「Spider」という綴りを使ってきました。

現在の「296 GTS」など、車名そのものにSpiderを使わないモデルもありますが、フェラーリの歴史を振り返ると「Spider」はオープンモデルを表す重要な名称のひとつです。

フェラーリ公式の歴史資料でも、2015年の「488 Spider」が紹介されています。

また、フェラーリのオープンモデルには「カブリオレ」など別の呼び方も存在します。

つまりフェラーリの場合、「Spider」は単なる英単語として使われているというより、長年にわたって受け継がれてきたフェラーリのオープンモデルを象徴する名称のひとつと考えたほうが分かりやすいでしょう。

ちなみに、調べていて気がついたことですが、フェラーリはクーペモデルと比べ、スパイダーの名前の付いた車種を発表するときのプレスリリースなどで出すメインのエクステリアカラーはイエローやブルーが多く、レッドであることが少ないです。

ポルシェは「Spyder」を使う

ポルシェは「Spyder」を使う
ポルシェの718に設定された「Spyder」(画像:ポルシェ718スパイダーのプレスイメージより)

一方、ポルシェでおなじみなのが「Spyder」です。

代表的なのが「550 Spyder」や「918 Spyder」、そして「718 Spyder」。

ポルシェ公式によれば、「Spyder」はもともと2人乗りの軽量なオープン馬車を意味する馬車製造用語に由来しています。

そしてポルシェでは現在、「Spyder」という名称をオープントップのミッドシップ・スポーツカーに使用するという独自の位置付けがあります。

つまり、ポルシェの場合は単に「オープンカーだからSpyder」というだけではありません。

1953年の「550 Spyder」から続く長い歴史があり、「Spyder」という名前自体がポルシェの軽量・ミッドシップ・オープンスポーツカーのイメージと結び付いているのです。

ポルシェ550 Spyderが「Spyder」のイメージを決定づけた

ポルシェ550 Spyderが「Spyder」のイメージを決定づけた
1953 ポルシェ550 Spyder(画像:プレスイメージより)

ポルシェの「Spyder」を語るうえで外せないのが、1953年に登場した「550 Spyder」です。

550 Spyderは、ポルシェがレース用として開発したミッドシップの軽量スポーツカー。

わずか550kgほどの軽量な車体を持ち、モータースポーツでも数多くの成功を収めました。ポルシェ自身も、このモデルを現在のSpyderにつながる伝統的な存在として紹介しています。

そのためポルシェにとって「Spyder」は、単なるオープンカーの呼び名というより、軽量でスポーティなミッドシップモデルを象徴する名前になっていきました。

現在の718 Spyderも、その系譜を受け継いでいます。

918 スパイダーも「Spyder」

918 Spyderも「Spyder」
ポルシェの918スパイダーも「Spyder」表記。Unsplash/Martin Katler

ポルシェの「Spyder」と聞いて、もうひとつ思い浮かぶのが「918 Spyder」です。

918 Spyderは、2013年に登場したプラグインハイブリッド・スーパーカー。

550 Spyderとは時代も性能もまったく違いますが、「Spyder」という名前は共通しています。

ポルシェは公式に、918 Spyderの名称についても、2人乗りの軽量オープン馬車を起源とする「Spyder」の伝統を受け継いだものと説明しています。

つまり550 Spyderから918 Spyder、718 Spyderへと、「Spyder」という名前そのものがポルシェの歴史をつないでいるわけです。

「Spyderだから屋根が完全にない」とは限らない

「Spyderだから屋根が完全にない」とは限らない
ポルシェ918Spyderは着脱式のハードトップを採用したスタイル。
(画像:918スパイダーのプレスイメージより)

ここも少し面白いところです。

Spyderという名前が付いているからといって、必ずしも昔ながらの完全なオープンボディというわけではありません。

例えば918 Spyderは、ルーフを取り外すことができるオープンモデルですが、現代的なボディ構造や空力性能を備えています。

つまり現在のSpider/Spyderは、昔の馬車の構造をそのまま意味しているわけではありません。

あくまで「軽量なオープン2シーター」という歴史的なイメージを現代のスポーツカーに受け継いだ名称と考えると分かりやすいでしょう。

ランボルギーニは「Spyder」、マクラーレンは「Spider」を使う

ランボルギーニも、オープンモデルの名称に「Spyder」という表記を採用しています。
ランボルギーニはSpyder(画像:ランボルギーニ・ウラカンEVOスパイダーのプレスイメージより)

「Spyder」を使うのはポルシェだけではありません。

ランボルギーニも、オープンモデルの名称に「Spyder」という表記を採用しています。

代表的なのが「Huracán Spyder」です。クーペモデルの「Huracán」に対して、電動開閉式のソフトトップを備えたオープンモデルとして設定されました。

また、ランボルギーニには「Gallardo Spyder」や「Aventador SVJ Roadster」など、時代やモデルによって異なる名称が使われてきましたが、「Spyder」はランボルギーニのオープンモデルを象徴する表記のひとつです。

一方、マクラーレンは「Spider」という綴りを使っています。

代表的なのが「720S Spider」や「570S Spider」です。これらはクーペモデルをベースに、開閉式ルーフを備えたオープンモデルとして開発されています。

一方、マクラーレンは「Spider」という綴りを使っています。
マクラーレンはSpider(画像:マクラーレン720Sスパイダーのプレスイメージより)

マクラーレンの「Spider」は、軽量な車体や高い走行性能を維持しながら、オープンエアでのドライビングを楽しめるモデルであることを示しています。

このように、ランボルギーニは「Spyder」、マクラーレンは「Spider」という表記を使っています。

ただし、両者のスペルの違いによって、性能やボディ構造に明確な差があるわけではありません。

ここでも、「Spider」と「Spyder」の違いは性能の規格というより、メーカーが採用してきたブランド上の表記や伝統の違いと考えるのが自然です。「Spyder」を使うのはポルシェだけではありません。

マセラティも長い歴史の中で「Spyder」という表記を採用しています。

例えば2001年に登場した「Maserati Spyder」は、2シーターのオープンモデルとして登場しました。

マセラティも長い歴史の中で「Spyder」という表記を採用しています。
(画像:マセラティ・スパイダーのプレスイメージより)

マセラティ公式資料によると、このモデルは4.2リッターV8エンジンを搭載し、3200 GTをベースとしながらホイールベースを短縮した2シーターのオープンカーとして開発されています。

さらにマセラティは公式資料の中で、自社のオープンモデルについて長年「spyders」という「y」を使った表記をしてきたと説明しています。

ここでも、「Spyder」という綴りは性能の規格というより、メーカーが長年守ってきた伝統的な名称として使われていることが分かります。

SpiderとSpyder、どちらが正しい?

結論から言えば、どちらも正しいです。

自動車用語としては、SpiderとSpyderのどちらもオープン2シーターを表す名称として使われています。

ただし、メーカーによって伝統的な表記が異なります。

例えば、

メーカー主な表記代表モデル
フェラーリSpider488 Spider、SF90 Spider、849 Testarossa Spider
ポルシェSpyder550 Spyder、718 Spyder、918 Spyder
マセラティSpyderMaserati Spyder
マクラーレンSpider650S Spider、720S Spider
ランボルギーニSpyderGallardo Spyder、Huracán Spyder

という具合です。

もちろん、メーカーの車名は時代やモデルによって変わるため、「このメーカーは必ずSpider」「こちらは必ずSpyder」と決めつけることはできません。

あくまでそのメーカーが採用してきた名称の伝統を見るのが正確です。

なぜメーカーはスペルを変えないのか

なぜメーカーはスペルを変えないのか
1文字の違いがその車やメーカーの歴史を表しています。Photo by Unsplash/Luke Miller

自動車メーカーがこうした名称を大切にする理由のひとつが、「名前そのものがブランドの歴史になる」からです。

例えばポルシェにとって「Spyder」は、550 Spyderから918 Spyder、718 Spyderへと続いてきた名前です。

これを単純に「Spider」に変更してしまえば、意味としては通じても、過去のモデルとのつながりが薄くなってしまいます。

自動車の世界では、車名や数字、アルファベットの組み合わせそのものがブランドの歴史を表すことがあります。

「Spyder」というたった1文字の違いにも、そうしたメーカーごとのこだわりが残っているわけです。

SpiderとSpyderの違いは「性能」ではなく「歴史」

SpiderとSpyderの違いは「性能」ではなく「歴史」
フェラーリの内装に付けられた488 Spiderのバッジ。Photo by Unsplash/Paolo Resteghini

結局のところ、SpiderとSpyderの違いを一言で説明するなら、基本的な意味は同じで、違うのは主に綴りとメーカーごとの歴史ということになります。

どちらもルーツは、19世紀ごろの軽量な2人乗りオープン馬車。

それが自動車の時代になると、オープンスポーツカーを表す名称として使われるようになりました。

そしてフェラーリやマクラーレンは「Spider」、ポルシェやランボルギーニは「Spyder」というように、それぞれのブランドで異なる綴りが定着していきます。

だからフェラーリの「488 Spider」とポルシェの「718 Spyder」を見比べても、名前のスペルが違うからといって、ボディタイプそのものに大きな違いがあるわけではありません。

むしろ面白いのは、たった1文字の違いに、それぞれのメーカーが積み重ねてきた歴史が残っていることです。

オープンカーの名前を見たときに「Spider」なのか「Spyder」なのかに注目してみると、そのメーカーがどんな歴史を大切にしているのかまで少し見えてくるかもしれません。


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参考資料・公式ソース

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